<事例報告>
医療施設内職員の結核健診の現状と課題
−結核感染予防のためのデータ管理の構築に向けて−


青山恵美1)2) 矢野久子2) 前田ひとみ3) 鈴木幹三2)

1)総合大雄会病院 感染対策課
2)名古屋市立大学看護学部・感染予防看護学
3)熊本大学大学院生命科学研究部

【要旨】
 医療施設内の職員の結核感染予防のために結核健診の実態と課題を明らかにした。
 愛知県内で結核罹患率が高い一宮市と稲沢市にある100床以上の12医療施設のうち同意の得られた10施設に対し、自記式質問紙調査を行った。さらに施設の健診担当者7名に、職員の結核健診とその後の支援に関する面接調査を行い、内容分析を行った。
 過去5年間(2010〜2014年)に結核が発生したのは8施設であった。各施設の接触者健診対象者数(最大人数)は3〜80名であった。感染者は2施設で6名であり、発病者はいなかった。内容分析の結果、職員の結核健診の現状と課題では、「職員雇い入れ時のベースラインデータの取得者・未取得者が混在」、「結核健診データの管理不良」、「IGRA(Interferon-Gamma Release Assays)陽性者対応の未整備」の3カテゴリー、接触者健診の現状と課題では、「職員個人データとして接触者健診結果の管理が困難」、「定期健康診断を利用したフォローアップの限界」の2カテゴリーが抽出された。雇い入れ時に実施された結核健診の検査の種類が雇用年度によって異なるために、結核感染のベースラインデータが管理・活用しにくいこと、接触者健診データは発病者ごとの保管で、職員個人別に蓄積されていないこと、結核患者が施設内で度々発生し、接触者健診後のフォローアップ対象者が累積しており、職員の健康支援が困難になること等が明らかになった。結核健診後の職員の継続支援ができるデータ管理の確立が重要である。