<原著>
血液がん化学療法におけるクリティカルパスを用いた
医業収益シミュレーション
小松恒彦1)2)3) 木村優子2) 鞍馬正江3) 小関 迪4)
1) 帝京大学第三内科(血液)
2) 帝京大学ちば総合医療センター医療情報システム部
3) 筑波記念病院・つくば血液病センター
4)医療法人社団筑波記念会
【要旨】
悪性リンパ腫と急性骨髄性白血病(AML)に対する化学療法におけるDPC対応クリティカルパスを作成し、支払い方式別の医業収益を推計した。対象レジメンは、悪性リンパ腫はABVD療法、Biweekly CHOP療法、R-CHOP療法、R-FND療法、AMLは寛解導入療法、地固め療法など60歳以上症例を対象とした4種類と、60歳未満症例対象の4種類で合計12種類を推計対象とした。医業収入は、出来高払いの場合は、診療報酬点数及び薬価とその実施回数から患者1人あたりの収入を算定した。DPCによる包括払いの場合は、DPC点数に基づき計算した。原価は、クリティカルパスを構成する医療行為の材料費(薬剤費、臨床検査費、入院時食事療養費)と治療・ケアにおける医師・看護師の人件費を対象に算定した。悪性リンパ腫においては、入院日数の大幅な短縮によりDPC対応入院+外来化学療法では、従来のDPC非対応型クリティカルパスより患者1人あたりの収益は減少した。一方、AMLにおいては、DPC非対応型クリティカルパスよりDPC対応型クリティカルパスの収益が増加した。
血液がん領域におけるクリティカルパスの導入は、病院経営の観点からも非常に有用であり、特にDPCを導入する病院においては、極めて重要な経営管理ツールになりうるものと考えられた。