<事例報告>
総合病院における新しい苦情・クレーム対応法の研究
―当事者同士の面談導入とジェネラルリスクマネジャーの中立的介入の効果―


林 里都子
福井総合病院 医療安全対策部

【要旨】
 患者側の苦情・クレームへの対応のため、2002年4月から、当院独自の1次〜3次対応からなるフローチャートを作成し実践した。ここで1次対応、3次対応はジェネラルリスクマネジャー(General Risk Manager、以下GRMと記す)が関与しない従来からの対応部分であり、2次対応が本研究で著者の考案したGRMが関与する新規な対応部分で、その2次対応ではGRMは中立的立場を堅持し、その中の最も対応の難しい最終局面では、患者側と医療従事者側の当事者同士が話し合う場である面談の導入とGRMの中立的立介入を行った。その効果として、1) 初めは双方に認識のずれがあったが、面談の過程を通して最終的には両者に歩み寄りがみられ和解へと進んだ。2)GRMの中立的介入については双方からの拒否はなく、GRMは両者の味方的存在と認識された。3)当事者同士の面談の導入とGRMの中立的介入は、不要な訴訟を抑制するだけでなく、訴訟以上に納得のいく解決を患者側・医療従事者側の双方にもたらすと考えられた。4)2次対応に要した平均日数は33日(最短日数2日、最長日数195日)であった。今回の対応を通して、和解へと至るためには、GRM、患者側、医療従事者側の三者間での信頼関係の形成が最も重要であると考えられた。