<原  著>
病院機能分化施策に応じた私的病院の変遷について
―福岡県私設病院を対象とした1998年・2012年の繰り返し調査から―


加藤尚子1)2) 近藤正英3) 大久保一郎3) 長谷川敏彦4)

1)国際医療福祉大学 医療福祉・マネジメント学科
2)筑波大学大学院 人間総合科学研究科
3)筑波大学 医学医療系
4)日本医科大学 医学部医療管理学教室

【要旨】
 一連の機能分化施策に対する私的病院の反応を検討するために、機能分化施策が強化された1990年代後半から今日までの私的病院の病院形態の変遷を、特定地域における繰り返し調査を基に分析した。福岡県下の医療法人と個人病院を対象に、1998年と2012年に実施した質問紙調査において、現在と将来の病院形態および機能分化施策についての見解を尋ねた。回答のあった90施設を分析した結果、1998年から2012年までに約4分の1の病院の形態が変化していた。しかし、全体の形態の割合には大きな変化はなく、私的病院が機能分化施策に敏感に反応したとは言い難い結果になった。もっとも、形態が変化した病院の方が機能分化施策を肯定する意見が多く、施策を受け入れる傾向が認められた。機能分化施策に迅速に反応して形態を変化させる病院がある一方で、施策への反応が慎重な現状維持のケアミックス型病院が多数を占める、という二層構造が想定できる。