<原著>
DPC対応型クリティカルパスの患者別原価計算
第1報 患者別原価計算システムの構築と未破裂脳動脈瘤での検証


藤本俊一郎1)2) 合田雄二1) 平井有美1) 大橋智明3)
労働者健康福祉機構 香川労災病院
1)クリティカルパス推進委員会
2)同 情報システム委員会
3)同 医事課経営企画係

【要旨】
 DPC対象病院においては診療報酬が包括支払いであるため、コスト管理とともに報酬の範囲内で必要な治療を行うことが経営上要請される。当院ではクリティカルパスを用いて診療の標準化・効率化を図ってきたが、さらに原価情報を分析するため、患者別原価計算システムを構築した。医事会計システム、DPCソフト、電子クリティカルパスソフトからの情報を原価計算システムに集積し、人事・給与データを活用して分析した。未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパス使用患者12例で原価計算を行い、収入は22,194,125円、原価は5,538,825円、収益は16,655,300円、収益率は75%であり、1人当たりの収益は1,387,941円であった。原価計算・収益原価構造グラフでの検討で収益の大部分は手術による収益であることが明らかになった。平均在院日数は入院期間Uの範囲内で、DPC収入も出来高収入を上回っており、未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパスはDPCに対応できていると判断した。
 クリティカルパスと患者別原価計算を融合することは、臨床的ベストプラクティスと経済的ベストプラクティスを可視化することができ、医療の質向上と経営基盤の確立に貢献できると考える。